秘める二人の、叶わぬ恋の進め方。

なんだろう、顔立ちこそあまり似ている訳ではないけれど、雰囲気とか、からかい方がどことなく柊ちゃんに重なる。

「そんな事ないですよ。九条さんも、お母さんによく似てらっしゃいますね」

「‥‥‥‥!」


今度は私が目を丸くする番だった。

一瞬どうしてばれているのかと耳を疑ったが、海斗さんが成宮さんの息子だという事を思い出して納得する。

でも正直、
あんまり知られていたくなかったな‥。

――西野明日香と九条颯人の娘。

私が私である前に、私は世間にとっては二人の娘なのだ。
大きすぎるそのレッテルに、平凡な自分が釣り合っていないことくらい分かってる。


「あははっ、なんでこんな娘が生まれちゃったんだろうって感じですよね、似てないですよ全然。私もお母さんみたいに美人だったらよかったなぁ」

「‥‥‥‥‥‥。」


そこまで口ばしって、しまったと思った。
さっきまでの流れで、そうですねって冗談で返してくれると思った。

でもそうだよね、こんな事いわれたら誰だって困るに決まってる。

だから今まで心の中で思っていても口に出すことなんて無かったのに─‥。
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