理系教授の秘密は甘々のはじまり
男性は呆然と波実を見つめたままその場を動こうとしない。男性の風貌にどこか見覚えがあったが、波実はあまり気にも止めずに男性に購入する本を入れるカゴを手渡した。

「たくさん買われるのならこれ使った方がいいですよ」

波実はにっこりと笑うと、お目当ての少女漫画に手を伸ばし、

「はい」

と言って男性に渡した。

「これと同じ本がたぶん数件先の古本屋にもあるってネットで調べてたので私はそこで購入しますね。だからどうぞ」

男性はそれを受けとると、顔を真っ赤にして

「あ、ありがとう」

と小さな声でお礼を言った。

「ぶつかってごめんなさい。良い1日を!」

波実は男性に軽くお辞儀をしたあと、出口の方に向かって歩きだした。
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