理系教授の秘密は甘々のはじまり
「鈴木さん!」

ずんずんと歩き続ける葉山を追いかける波実に向かって、坂本が駆け寄ってきた。

「あの、これを,,,」

坂本は、個人のメールアドレスとSNSの検索IDが書かれている坂本の名刺を波実に渡した。

「連絡待ってます」

小声でそういうと、坂本は笑顔で手を振って学会メイン会場へ戻っていった。

波実が呆然としながらも、名刺をバッグになおそうとすると、いつのまにか横に葉山が立っていた。

「油断も隙もない」

「えっ?」

葉山は名刺を取り上げると

「あいつは俺のファンなんだろう?これは俺が預かる」

坂本が葉山のファンであることを話したかな?

波実は、さして坂本の連絡先を知りたい訳ではなかったし、坂本が葉山のファンであることは事実だったので、名刺は葉山に渡すことにした。

「お前が鈍くてよかったよ」

意味がわからないことを言われて腹が立ったが、学会発表とパソコン操作(してはいないが)のせいで、精神が疲れ果てていた波実は、ツンとソッポを向いただけにとどめた。
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