理系教授の秘密は甘々のはじまり
神社から真っ直ぐ進んで、竹林を抜けると、目的の旅館はすぐに見つかった。

純和風の造りで、品のある高級旅館。
出迎えてくれた支配人は和服を着ていた。

「葉山さま、本日はご利用ありがとうございます」

真澄は慣れた様子で履き物を脱ぎ廊下を進んでいく。

「波実、こっち」

真澄は、空いている方の手で波実の手を引いた

「お部屋はこちらでございます」

案内されたのは、露天風呂つきの離れ。どう見ても部屋は一部屋しかない。

「あのー、私の部屋は,,,」

「無粋なことを聞くな」

足を止めた真澄が握っていた手を離し、波実の口を片手でふさいだ。

支配人はすでに玄関に到着しており、離れの玄関の鍵を開けようとしている。

"この状況のどこに小粋さを求めるんですか!"

もごもごと発した波実の言葉は、真澄の手で遮られている。

「仲がおよろしいんですね」

"また、それ?"

上機嫌の真澄によって、そのまま離れの中に引きずり込まれた波実は、うんざりしたように溜め息をつくしかなかった。
< 36 / 48 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop