理系教授の秘密は甘々のはじまり
「ところでお前はどこに行きたいと思ってたんだ?」

神社を出ると、真澄が波実に聞いてきた。どうやらこの後も一緒に行動するらしい。

「アニメのグッズが売っている店に行こうと思ってました」

「だと思った。それは明日帰る前に行こう。おなか空いただろ?お昼を食べたら、旅館にチェックインしよう」

なんですと?

今日の夕方には東京に帰るとばかり思っていた。確認しなかった波実も悪いが、どこに泊まるというのだ。

「この近くに宿をとってある」

ここは嵐山。真澄は京都でも人気の露天風呂がある旅館の名前を告げた。

「いつも頑張ってる俺達にご褒美だ。金は心配ない。波実も明日は用事ないんだろう?」

そりゃあ、帰っても漫画か小説を読むだけだが,,,。
決めつけられるのは気に入らない。

しかし、温泉好きの波実には魅力的なご褒美だ。

「やった!温泉つき旅館にタダで泊まれるなんて。教授、素敵です!」

波実の冗談めかした発言に、真澄の顔が赤くなる。

「これから教授と言ったら、宿代は波実もち、な」

「え、真澄さん、ごめんなさーい」

「可愛いな」

と破顔する真澄が波実の頭を撫でる。

その様子に、なぜか波実の胸は高鳴った。
昨日から一緒に居すぎてどうかしてしまったのかもしれない。

"こんなイケメンと長時間いたら、勘違いしてしまうに違いない。しっかりしなくちゃ"

波実は、自分の中に芽生え始めた恋心に気づく前に蓋をするのだった。
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