理系教授の秘密は甘々のはじまり
露天風呂は最高だった。夕暮れ時になり、ライトアップされた木々は、秋の紅葉と相まって美しいオレンジに輝いている。

お湯はトロトロで肌をスベスベにしてくれる。備え付けのアメニティも高級品ばかりだ。

波実は想定外の小旅行に心を踊らせていた。この一週間、葉山の豹変ぶりに驚かされっぱなしであったが、その行動の全てに優しさが感じられた。

波実への過剰な干渉を感じないわけではなかったが、それを嫌とは思わなかった。彼女と間違われてキスをされてしまったが、どうやらあの美鈴と間違われていたのかと思うと複雑な心境だ。

真澄の強引さと優しさに触れ、波実はこのまま雰囲気に流されてもいいかなー、と思い始めていたが、先程の美鈴と真澄のやり取りを見ると、やはり波実の自意識過剰だったのだろうと思える。

"きっと真澄は美鈴に会いに来たのだ。今日の夜は、きっと美鈴のところに行くつもりだろう"

波実は、ほんの少しだけその事を寂しく感じていたのだか、それ以上考えないことにした。

温泉からあがって、離れに準備してあった浴衣に着替える。浴衣は朱色に黄色とオレンジの紅葉が描かれている素敵なデザインだった。

波実は、濡れた髪をハーフアップにし、暖簾をくぐって大浴場の外に出る。

休憩室では、数人の男女と親子が、波実と同じように連れが大浴場から出てくるのを待っていた。

波実は、自動販売機でコーヒー牛乳を購入すると、

「漫画ではこれが銭湯上がりの定番よね」

と言ってイッキ飲みした。
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