理系教授の秘密は甘々のはじまり
「ちょっと、真澄どういうこと?あんな可愛い女の子連れてくるなんて聞いてない」

田城美鈴は、真澄の従姉妹。東京からこの旅館に嫁いでもう、6年になる。若く見えるがもう35歳だから、真澄よりも7歳年上だ。

一人っ子の真澄は、忙しい両親が長期不在になるときは、よく美鈴の家に預けられた。中学に上がってからは一人で留守番する方が気が楽になり、美鈴の家にも行かなくなったが、食事などで田城家にはずいぶん世話になった。

同じく一人っ子の美鈴は、年の離れた真澄を実の弟のように可愛がってくれる。だから、真澄も京都で仕事がある時は、こうしてこの旅館を利用するようにしている。

「あんた、恋愛なんて諦めてるって言ってたじゃない。彼女、2次オタでしかも少女漫画好きの真澄のことちゃんと理解してくれてるの?」

「あいつもほぼ俺と同類だ。結婚や恋愛に夢を求めてはいないようだが、架空の世界として崇めてる」

美鈴は、若干頬を膨らませて、心配でたまらないと言った様子で言った。

「ちゃんとカミングアウトしなきゃ、勝手な理想を押し付けられて、また真澄が傷つくのよ」

「大丈夫。あいつは人を見かけや趣味で判断したりしない。」

真澄は、確信を持っているといった表情で告げると

「あいつがすぐに上がってくるといけないから、もう俺も風呂に行くよ。とにかく、今回は大事な旅行だから邪魔しないでくれ」

と言って、手を降りながら男性風呂の暖簾を潜っていった。

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