理系教授の秘密は甘々のはじまり
あっという間に金曜日になった。

現在は朝の6時。波実は東京駅の新幹線乗り場で葉山教授を待っていた。

新幹線は6時14分出発。京都駅には8時23分には着く。

「現地集合で」

と、波実は葉山に伝えてみたが、あっけなく

「もう、取ってある」

と返された。

葉山は単独行動を好む。なのに今回はどうしたというのだろう。突然の学会発表に戸惑う波実を気遣ってのことだろうか?

波実は、不可解な葉山の行動に首をかしげながらも、それ以上考えることを放棄した。頭の中は、明日の学会のことでいっぱいいっぱいだ。

「鈴木」

右側のエスカレーターから背の高いスーツを着た男性が降りてきた。葉山教授だ。

「葉山教授、おはようございます」

「ああ、おはよう」

プルプルプル,,,という音と共に、京都駅行の新幹線がホームに入ってきた。

二人は揃って指定席のある新幹線5号車に乗り込む。
ゆったりとしたシートは心地よさそうだったが、葉山教授の隣の席。

何度もいうが、波実は3次元の男性には明るくない。

"二時間も話が持つのかな,,,"

という、波実の心配は無用だった。

このところ、学会発表の練習と緊張で眠れなかった奈美は、新幹線の心地よい揺れにまかせて、出発後まもなく、秒で眠ってしまったからである。

しかも、葉山教授の肩に寄りかかりながら,,,。

葉山はまたしてもスマホを取り出して、カメラ機能を作動させていた。
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