理系教授の秘密は甘々のはじまり
「,,,ずき、鈴木、起きろ。もうすぐ着くぞ」

低くて心地よい男性の声が聞こえる。

「ふぁい,,,」

波実がゆっくり目を開けると、目の前に整った男性の顔があった。

「わっ,,,」

驚いて身を引こうと立ち上がると、新幹線が急にカーブを曲がり始めた。

慌てた波実の体が、葉山に覆い被さるような形になった。その瞬間、葉山の唇と波実の唇がぶつかる。

「うぅーん,,,む」

カーブを曲がりきる数秒間、二人の唇も体も重なったままだった。

唇を離そうと奈美は体を捻るが重力に逆らえず、何故か葉山にホールドされた体はびくともしない。

「ご、ごめんなさい」

「ああ、急にカーブにさしかかったからな」

ほどなくして、京都駅に到着したことを知らせるアナウンスが聞こえてきた。

葉山は無表情のまま波実の体を離すと、何事もなかったかのように、荷物棚の荷物をおろした。

事故とはいえ、波実にとってはファーストキスだ。波実のドキドキする気持ちとは反比例するように、葉山の表情は変わらない。

段々と波実の気持ちも落ち着きを取り戻す。

"ラットのあらしとキスしたと思おう。これは事故だから"

波実も葉山に続いて荷物を下ろすと、京都駅に到着した新幹線から下車した。
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