35階から落ちてきた恋 after story ~you are mine~
女性専用特別ルームの設備を満喫していたらうっかり寝過ごしていて、朝食をとる余裕もなく出勤ギリギリの時間にクリニックにすべり込んだ。
入浴剤もアメニティーも特別なもの。
フットマッサージ付きのマッサージチェアにアロマキャンドル、高級チョコレートにシャンパン。まさにプリンセス。
「ひゃー、遅刻ギリギリ」
メイクもそこそこに髪も一つに束ねてシュシュで留めただけ。
「あれ、果菜さん、今日メイクずいぶんとナチュラルですね。元がきれいだからそれでもいいですけど、今日一番で並んでる患者さん、若いイケメンさんですよ。診察前にメイク直ししますか?」
若手ナースの知世ちゃんにからかわれる。
「そうだ。私、今日は眉毛忘れてないよね?」
知世ちゃんに向かって自分の眉を指差した。
前回寝坊して遅刻ギリギリだったときは何故か眉だけメイクを忘れてしまったことがあったから。
幸い私はすっぴんでも眉毛は薄い方ではないのでマロ眉になってしまうことはないのだけど、それでも、うすぼんやりとした印象になってしまう。
知世ちゃんはそれを思い出してプッと吹き出した。
「ハイ、眉毛はありますよ」
「も、眉毛があればいいや」
「ホントに果菜さんて自然体」
「はいはい、それ褒め言葉ってことにしとくー。私、今日は採血担当だったよね。今日も安心安全第一でがんばろう」
仕事にプライベートは持ち込まない。
私は自分の中のお仕事スイッチを入れた。