35階から落ちてきた恋 after story ~you are mine~
「美味しいもの食べに行きましょうよ」と秋野真紀さんに誘われたのは10日程前のこと。

即オッケーした私だったけれど、それが泊まりでってことになり、行き先が北海道になり、そしてついでに映画祭も観ましょうと言われて今に至る。
これは絶対に最初から計画的だったと思われる。

真紀さんの「行きたいお寿司屋さんがあるの」から始まり、
「ちょっと遠いお店だからお休み取ってね」
「お肉も食べたいから2泊しましょう」
それは旅行といいませんか?

「主人も偶然近くに行くみたい」
・・・偶然ですか?

「ついでだから映画祭も覗きましょうよ」
もはや返す言葉もない・・・。

「西さんの主演映画が今回の映画祭の目玉ですよね?」

「隼人さんが『ヒマだったらレッドカーペットで俺の隣を歩いてくれないか』なんて言うから。まあ偶然その日に同じ北海道にいることだし?隣を歩いてあげてもイイかなと思って。ね、私って優しい奥さんよね」と女優秋野真紀の世の中の男性を虜にする微笑みをされてしまうと文句も言えない。
真紀さんは来月に挙式を控えている。

いや、そもそも真紀さんに文句を言える人間などこの世に存在するのだろうか。

「スタッフと一緒に果菜ちゃんと朋花も中に入れるように手配してあるから。ワンピースにハイヒール程度のオシャレはしてね。地味すぎると逆に目立っちゃうから。あ、タカトには内緒で行って向こうで驚かせようね」

・・・決定事項じゃないですか。

・・・これは貴くんに仕掛けた真紀さんのいたずらなんだとやっと気が付いた。
当日現地で貴くんに私を見せるつもりなんだろう。

真紀さんのこの性格、嫌いじゃないけど苦笑いしかない。

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