35階から落ちてきた恋 after story ~you are mine~

カニ食べよう

***

「カニ美味いか?」
「うん。ほっぺたが落ちそう」
「よかったな」
「うん、貴くんのおかげ」
ともすれば無言になってしまうカニ料理。
私たちもご多分に漏れず・・・。

深夜のホテルの部屋で茹でカニをむさぼり食べる新婚夫婦。それが今の私たちである。


遡ること8時間前。
会場にはいる前にひと悶着あったものの今はこうして事務所指定の席に座り西さんの映画を観てLARGOの主題歌演奏を聴いて感動していた。

西さんの映画はアクションだけでなくその背後の人間ドラマもとても丁寧に描かれていたし、映像も特別にきれいでまさに映像美としてとても素晴らしかったけれど、私の一番はやはりLARGOの音楽だった。

「手が痛むんですか?」
隣に座る青山君がそっと尋ねてくる。自分でも意識しないで左手の薬指にはまる指輪に触れていたらしいことに気が付いて頬が熱くなる。
こうして指輪に触れていると貴くんと離れていても彼の存在を感じることができる気がして最近では半ば癖のようになっていた。

「何でもない。ありがとう。大丈夫だから」
照れ隠しに微笑むと青山君は驚いたように目を大きくして私を見つめ返してきた。

あれ?私何か変なこと言ったかな。

「ああー、青山氏、畏れ多くも進藤さんの奥サマに対して近付きすぎぃー。しかも笑顔に見とれるとかやばくない~?」
朋花さんが身体を寄せて小声でからかってきた。
その声に青山君がびくっと体を揺らす。
何だか仔犬みたいな動きだと思ってくすっと笑ってしまう。

「近くにいないとボディーガードはできませんから」
とぶすっとして背もたれにもたれかかった青山君はやっぱり年下の可愛い男の子だと思う。

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