35階から落ちてきた恋 after story ~you are mine~
先週のこと、
マンションのテラスにいたら果菜の肩にインコがとまってボソボソと話し始めたのだ。
「貴くん、この子迷子かな?」
果菜の声を聞くと「まいごー」「まいご、まいごー」とインコが騒ぎ始め果菜は瞳をキラキラとさせた。

「すっごいねぇ。おしゃべりできるんだね。お利口さん」
「しーちゃん、オリコー、オリコー」
インコが調子に乗って話し始めた。

「うわー、あなたしーちゃんって言うの。私、果菜。よろしくね」
「かな、かなー」
「うん。しーちゃん」
「かなっ、しーちゃん」

何だ、こいつら会話してんのか。驚くやら呆れるやら。
インコは果菜の肩から離れようとしない。
「…」
果菜の視線がイタイ。
「…わかったよ」
俺はスマホを取り出してマンションのコンシェルジュに連絡をした。

このマンションには魔法使いがいる。
先月、マンションの前で迷い犬を拾った果菜を助けてくれたのは、コンシェルジュの坂井さん。俺たちの父親ほどの年齢の人だが仕事ができるだけでなく、顔も広い。
< 211 / 218 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop