35階から落ちてきた恋 after story ~you are mine~
「じゃあ、上夕木さんを送って僕も帰るから。美知子さん、戸締りとあなたの後輩をよろしくね。キミも気を付けて」

先生に連れられて出ると、すでに乗用車が玄関前に停められていた。
どうやら、俺は先生に送ってもらい、後から来た女性が彼女を送っていくことになっているらしい。

「あ、これ持って行ってください。お大事にどうぞ」
笑顔の彼女に見送られて先生の助手席におさまった。
勢いよく渡された紙袋。
思わず受け取ってしまったけれど。

車が発進してからもそれをじっと見ていると先生が声をかけてきた。
「ああ、それうちのナースからの差し入れ。持って帰ってあげて。合間にバタバタと買い物に行ってたんだ。君が一人暮らしって聞いたから心配したんじゃないかな。気が付く子だから」

「俺、一人暮らしって言いました?」
「あ、覚えてないのかな?君を連れてクリニックに来る時に話したらしいよ」

驚いた。
そんなプライベートな話をした記憶が自分にはない。

「他にも何か話したんでしょうか?」
「さあ、今朝から頭痛がしたとか鎮痛剤は飲んでないとか仕事が忙しくて睡眠も食事も疎かにしていたとは聞いた。一人暮らしだからって話もそこで出たらしいね」

「そうですか。あまり他人にプライベートな話をしない方なんで、ちょっと驚きました」

「ああ、まあ仕方ないよ。多分うちのスタッフのせいだから。あの子、うちのナースの主力でね。不思議なんだけど若い子なのになぜか頼りたくなっちゃうでしょ?僕の奥さんの後輩なんだ」
先生は自慢げに言った。
< 52 / 218 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop