35階から落ちてきた恋 after story ~you are mine~
いつか果菜ちゃんはあの日拾った汚い捨て猫が俺だと気が付いてくれるだろうか、そんな事を考えていた。

君の幸せを祈ってるけど、自分のことも思い出して欲しい。

あの時、俺が自分で保険証をもってクリニックに会計に行って、キミにお礼を言ったなら。キミを誘えていたら。キミとプライベートで会って話をすることができていたら・・・
タカトとしていたようにじゃれ合って俺の背中をバンバンと叩いて笑い合ったり、一緒に歌を歌うことができたのかな。

そんな事を考えても無駄だってことはわかっているのに、考えてしまう。
彼女が選んだのは友人の進藤貴斗ってオトコで、昔から一歩退いて冷めた態度ばかりとってるアイツが彼女にだけは執着して人並みの感情を表して。
彼女もアイツの前でしか歌わないというし。
二人は二人だけの世界を築いていて、誰にも入り込めない関係だってこともよくわかっている。

俺の方も果菜ちゃんのことを愛してるわけじゃない。

果菜ちゃんに出会って、久しぶりに感情が動いただけで。
女なんてどれもたいして変わらないって思ってたのが、果菜ちゃんに拾われて・・・モノクロに見えていた女たちと違って彼女だけがカラー写真のように色が付いて見えたんだ。

「それが恋って言うんだよ」

飲みすぎてため息をついた俺に須川さんがポツリと語った。


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