未来を見るなら、君と一緒に

✱笑顔にさせてみせるから

『もしもーし、潤ちゃん?』



仕事を辞め、引っ越してから随分だったある日。
高校の先輩から電話がかかってきた。



「瑠奈(るな)さん、お久しぶりです」



瑠奈さんと話すのも久しぶりだった。
というより、だれかと話すのがといったほうが正しいかもしれない。

仕事をやめて、ろくに人と会話もすることがなくなってしまった。
そのうち季節は巡って、あの病院に就職をしてから1年が経っていた。

本当なら社会人2年目の春。
今頃、後輩とかができているはずで。
そんな日々を賢晴は何の問題もなく過ごしているんだと思うと腹が立つ。


『潤ちゃん、どこかの病院でお仕事してるの?』


「……っ、いやいまは何も……」



仕事のことを誰かに聞かれるのが嫌だった。
いまでも、手の感触が覚えてる。
いつも誰か患者さんの手をとって笑っていた日々を覚えてる。



『え?働いていないってこと?』


「はい、そうです」


『うちの実家が老人ホームをやっているのは知ってるよね?』


「はい」

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