君を愛で満たしたい~御曹司のとろ甘な溺愛~
「北里は、彼氏いる?」


注文のために呼んだウエイターが行ってしまうと、彼は再び口を開いた。


「はい」


隠していても仕方がないので正直に答えると、彼の目が一瞬大きく開いた気がする。


「付き合って長いの?」
「五年くらいになるでしょうか。学生時代からの付き合いです」


彼氏の中川哲也(なかがわてつや)は、同級生。彼は今、大手スポーツ用品メーカーに勤めている。


「随分長いんだね。結婚とか、考えないの?」


一ノ瀬さんは炭酸水を口に運んだあと聞いてきた。


「そういう話も出ています」


実は一カ月ほど前にプロポーズされたのだ。


「そう。おめでとう、か……」


なぜか大きなため息を吐く彼に首を傾げると「あぁ、ごめん」とすぐに謝られる。


「仕事を辞めてしまうのかなと思って」
「いえ。まだお世話になるつもりです」


子供ができたときはどうするかわからない。
しかし今は、結婚しても勤め続ける気持ちでいる。
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