君を愛で満たしたい~御曹司のとろ甘な溺愛~
「一ノ瀬さんの志は素晴らしいです。部下として誇りに思います」
「それなら、そんな顔をするな」
「でも寂しいんです。失礼かもしれませんが、一ノ瀬さんは私の上司であり、兄のような存在だったんです。どんなに苦しいことがあっても、優しく迎え入れてくれる場所というか」


うまくは言えないけれど、彼がいたので怖がることなく外にどんどん出ていけた。
どんなにボロボロになっても帰る場所があったから。


「兄、か……」


彼はなにかをあきらめたような表情を浮かべ、小さなため息をつく。


「ごめんなさい。失礼ですよね」
「いや。喜ばないといけないんだろうな」


彼は苦笑したあと、しばらく黙ってしまった。

それから運ばれてきた料理に手をつけたものの、やはり一ノ瀬さんがいなくなるというショックで味がわからない。

手が止まってしまうと、彼も同じようにフォークとナイフを置いた。
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