君を愛で満たしたい~御曹司のとろ甘な溺愛~
自立しているのがいけないというの? 
もっと甘えて無理難題を言えばよかった?
五年も付き合ってきて、今さら?

混乱して脱力してしまう。
私は涙を流したまま、ひたすら夜道を歩き続けた。



それから二カ月。私は脇目もふらず仕事に没頭していた。

もう結婚なんてしない。恋も、いい。

田舎の両親には結婚が取りやめになったとだけ電話を入れた。
電話口で母が大きく取り乱し『一度、帰ってらっしゃい』と言われたものの私は拒否した。

結婚を喜んでくれていた父や母を悲しませたことに罪悪感でいっぱいになり、顔を合わせるのが怖かったからだ。


それから電話を変わった父から婚約破棄の理由を深く追及されたものの、性格が合わなかったとごまかして、哲也の浮気については言えなかった。

彼から浴びせられた言葉がショックで、私が悪かったのかもしれないと思ってしまったからだ。

しかし、電話から聞こえてくる母の泣き声に、胸が締め付けられてしまった。
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