君を愛で満たしたい~御曹司のとろ甘な溺愛~
「そういうところがかわいくないんだよ。泣くわけでもなく、いつも冷静。キャリアウーマンだかなんだか知らないけどさ、少しは男を立てるってこともしろよ。お前には、守ってやりたいと感じる要素がひとつもないんだ」


心が凍っていく。
それならどうして結婚なんて考えたの? プロポーズなんて、したの?


「言うことはそれだけ?」


謝罪の言葉もないの?
私は必死に怒りをこらえ、歯を食いしばる。


「あぁ」
「さよなら」


私はそのまま彼のマンションをあとにした。
もう二度と来ることはない。

本当は殴ってやりたかった。取り乱して泣き叫んで……。

そんなことを考えていると、我慢していた涙があふれてきて止まらなくなる。


「なんなの……」


私がなにをしたの? 一生懸命働いていただけじゃない。

できる限りで苦手な料理も頑張って彼に振舞ったし、彼が会いたいと言えば、なんとか時間も捻出した。

『守ってやりたいと感じる要素がひとつもない』って……。
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