七夕エンドロール

据山くんがいなくなった河原はさっきよりもずいぶんと冷たく感じた。
「うっ、うっ、うわああああああああん!うわあああああああん!好きだったのにぃ!私の方が昔から、大介くんこと、好きだったのにぃー」
大粒の涙が何粒も何粒も私の頬を転がり落ちる。
蓋をしたはずの気持ちが、溢れる涙の粒によってこじ開けられる様だ。
涙粒はこぼれる。
何粒も何粒も・・・・・・・・・・・。

誰もいない夜の河川敷で、声を出して泣いた。
いつまでもいつまでも。
大介くんと話さなくなった時間を埋めるように、私は泣いた。
まだ私も大介くんも子供だった、あの頃の様に。みっともなく。


涙は枯れて、私は先ほどまで据山くんが座っていた石に腰かけている。
寒い。これは風邪を引いたな。私は鼻水を啜りながら思う。
長い長い失恋だったなぁ・・・・・・。
私はため息を漏らす。
涙が乾いた頬が乾燥して痛かった。
それでも、そんなこと気にならない位に胸が痛かった。
やだ、私、詩人みたい。
皮肉な笑いが浮かぶ。

「チトセ‼」
土手の方から私の名前を呼ぶのが聞こえた。
チトセって、私の名前だったよなぁ・・・・・・泣きつかれて働かない頭でそんな事を考えながら、私は声のした方を振り返る。
そして、その姿に目を見開く。
花が・・・・・・いた。
私みたいに生足のミニスカートに、モコモコの白セーターを着て、素足にサンダルを足に引っかけて。
私より寒そうだ。
花は・・・・・・こんなところでなにをしているんだろう?
据山くんは、どうしたのだろう?

そんな私の疑問を無視する様に、花は土手を転がりそうになりながら駆け下りてくる。
そして、私をぎゅっと抱きしめた。
芯まで冷え切った身体を、花の温かさが包み込む。
「どうしたの?花、据山くんは?」
「置いてきた」
「置いてきた?どうして・・・・・・」
「だって、チトセが泣いてたって聞いたから」
「え?」
「私、それ聞いたら、居ても立っても居られなくて・・・・・・」
「ダメじゃん。据山くん、置いてきちゃ・・・・・・」
「うん。ダメ」
「ヨリ戻す、チャンスだったのに・・・・・・」
「うん」
乾いたはずなのに、一滴も残さず、こぼしたはずなのに、また涙が、止まらない。
「ダメ・・・・・・じゃん・・・・・・」
「そう。ダメ。でも、私、気づいたら、走り出してた・・・・・・」
「なんでよ・・・・・・なんで・・・・・・だよぉ・・・・・・」
私達は真冬の空のした。
ぎゅっと抱きしめあって、涙を流した。
花は私がどうして泣いているのかなんて聞かずに、ただ、いつまでも、私を抱きしめてくれていた。


結局、花が据山くんをほおって私のところに走ってきてしまったせいで、花と据山くんがヨリを戻したのは、それから五か月後の七月になってからだった。
東京の学校の見学に行こうとする花を、それはそれはドラマチックに据山くんは止めたらしい。
最後には、二人して花の両親に土下座したとか。
まぁ、それは風の噂で聞いたことで、私はただ、花から、据山くんとやり直す事になったと伝えられた。
据山くんは私からの告白を花には話さないでいてくれているらしい。

私は、あの日の河川敷に一人座っている。
見上げればアルタイルとベガ。そして、それを切り離す様に悠然と流れる天の川。
強がりではなく、花と据山くんが一緒にいるのを見るのが好きだ。
まるで少女マンガの中の様な二人のやりとりが好きだ。
七夕の物語程ロマンチックでよくできた物語ではないけれど、二人のこれから歩む道を私は見ていたいと思う。
二人の物語はきっと私にはとっては、七夕の物語より好きなものだろう。
やはり私は、一年に一度でなく毎日二人が笑顔でいる。そんな物語の方が好きみたい。
そんな二人の物語に私がでてくることはないだろう。
でも、私は天の川を見つめながら、あの冬の日を思い出し、思う。
二人の物語の、エンドロールくらいになら、私の名前も出してもらえるだろうか?と。

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