愛してるのに愛せない。
第Ⅰ章
「おーい!」

俯いて歩いていると、前から友達のゆきが、手を振りながらこちらに走ってきていた。

「ゆき、どうしたの?なんか慌ててる?」

そう聞けば、ゆきは周りをきょろきょろとしてからグッと顔を近づけてきた。

「あんた、知らないの!?」

「何を・・・。」

思わず退けぞる私の腕を強引に引っ張り歩き出すゆきは、終始周りを警戒しているように思える。

「そんな怖い顔で周り見て、何があったの?」

半ば、呆れ気味な私の質問には答えずに、ゆきの車まで歩かされた。

「ちょっと?」

質問に答えないゆきにイラつきを感じた私は、言い方が少しきつくなってしまう。

「あんた、本当に何も知らないの?」

「だから何が。」

有り得ない・・・といった表情をするゆきに、怪訝な表情になる。

「いい?今この街で噂になってることがあってね?」

「噂?」

コクン・・・とひとつ頷いたゆきの口から、

「竜王が帰ってきているって。」

そんな言葉が飛び出した。

「うっそ・・・。」
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