きみとなら、雨に濡れたい



私は今どんな状況で、小暮がどんな風に庇ってくれたかも分からないのに、お父さんまで打ち解けたように「小暮くん」と呼んでいる。

時計を確認すると17時になっていて。どうやら私は五時間近く眠っていたようだ。


「……なんなの」

なんだかムカついてきた。

私が寝ていた間に事故の経緯とか、怪我の検査とか。そういうものをすべて一段落させてしまった小暮に。


「不機嫌になれるぐらい元気でよかったよ」

この余裕も、気にくわない。


助けてくれなんて頼んでない。なのに、いつも助けてくれる。

私よりも大きな怪我をしてるのに、私よりも先に動いて、私が会いにいく前に会いにきてくれる。


「……バカ……ッ!小暮が無事でよかった……」

文句を言いながら涙が出た。


私のあまのじゃくな性格に、お母さんとお父さんまでクスリと笑う。

それから私も一応身体の検査をして、久しぶりに家族で時間を過ごした。「本当になんともなくてよかった」と言いながら、「帰りになにかご飯でも食べようか」と提案したのはお父さん。

「そうね」と、お母さんが答えると、空白だった時間が嘘のようにいつの間にか家族の形に戻っていた。


きっと、それは美憂が一番望んでいたこと。離婚しても、いい関係でいられるように美憂は架け橋になってくれていたから。


その架け橋が今も壊れずにあるんだと思ったら、また泣きそうになった。

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