天才策士は一途な愛に跪く。
「レッスンが終わるまでは遊べないんだ・・。もうちょっと待っててね。」

遊びたい気持ちを押さえて、彼女のまだ小さな頭を撫でる。

僕は、赤ちゃんの時にぐずっていた彼女をなだめるために側にあったピアノを適当な
リズムで奏でた。

大泣きしていた彼女は、僕の音で涙を止めて可愛い笑顔を浮かべたんだ。

嬉しくて、彼女に笑って欲しくて僕は香澄にピアノを教えてもらうようにお願いをした。

「私、アオイが弾くピアノの音大好きだよ。
お母さまのも好きだけど、アオイの音は優しくてうれしくなる!!」

目を輝かせて、僕を見つめるアキラを見て僕の頬は赤く染まる。

「晶のピアノはね、透明感がある音の中に光が溢れているんだ!!
僕も君のピアノが大好きだよ。」

その言葉にまだ小さな少女は嬉しそうに笑った。

僕がピアノを弾くなら、自分も始めたいとピアノを初めた彼女はすぐにその才能を
開花させた。

4歳の彼女は難しい曲をさらっと弾いてしまった。
母親の才能を受け継いだだけでなく、彼女のピアノは楽しさと、好奇心であふれていた。


あれは、僕の7歳の誕生日パーティの日だった・・。

「アオイ、亜麻色の曲を弾いて!!」

アキラが青い空色の瞳を輝かせて、僕を強請るように見る。


パーティ会場の庭にピアノが運び込まれていた。

「いいよ。こっちにおいで、アキラ!!」

僕は、招待客の前でピアノを披露していた。

僕は、小さな頃から割とモテていた。

母に似た、王子様のような中性的な容姿で人気があった。

そんなパーティ会場では、僕の隣の席を巡って女の子たちが争う姿が見られた。

「アキラ、なんでいつもアオイの隣にいるの!?どいてよ!!」

隣で楽しそうにリズムを取るアキラを、近くにいたブルネットの髪の女の子が押しのけた。

いきなり、押しのけられた私は
グラリとバランスを失った晶が椅子から落ちそうになった。

「・・危ないっ!!」

僕は咄嗟に、小さなアキラの身体を庇って彼女の下敷きになった。

イスの背に背中がぶつかり、痛みが走った。

咄嗟に顔を歪めた。
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