天才策士は一途な愛に跪く。

「ごめんね・・。あきら、愛してるんだ。もう、二度と離さないから。」

私はその言葉に、痞えたように声が出なくて何度も頷いた。

抱きしめられた身体が、そっと離れて見つめ合う。

目が合うと、頬が熱くなって目を反らしたくなった。

そんな私をクスッと笑った聖人は、私の顎をそっと掴む。

見上げた瞳にゆっくりと影が落ちてくる。

琥珀色の瞳は切なそうに私を見ていた。

ゆっくり降りてきた唇が重なり、唇に聖人の熱を感じた。


離れていた距離を埋めるように深い口づけを交わす。

首の後ろから回された腕に、答えるようにすっぽりと彼の身体に
包まれた・・。

何度も、角度を変えて
繰り返される口づけに溶けてしまいそうだった。

「・・っはぁ・・・。」

私は、息を荒く吐いた。

慣れない深い口づけに、耳まで真っ赤になった私の瞳は潤んでいた。

骨抜きになった腰は崩れ落ちて、倒れそうになった。


「ああ、ごめん・・。止まらなくなっちゃった。」


そんな私を嬉しそうに笑って見下ろす。

腰を抱えて、私を優しく抱き留めると
近くにあった列席の最前列の椅子の上へとそっと降ろされた。

腰が砕けた私は、頬を染めたまま彼を見上げていた。

長い睫毛に縁取られた琥珀色の瞳は、キラキラと輝いていた・・。

まるで月のような美しさで光り輝いていた。

整った顔が、少しずつ離れていく。

少しだけ寂しさを覚えていた。

私は熱が冷めやらぬ呆然とした表情で聖人を見つめていた。

「晶・・。」

「は、はい?」

急に呼ばれた名前に、驚いて私はポカンとした顔のまま返事を返した。

ブルーのストライプのスーツ姿で腰を屈めて膝立ちになった聖人に
私は息を殺したまま目を見張った。

「もう離れたくないんだ。」

「だから、誓約を結びたい・・・。君と、この先の約束を誓い合いたい。」

その言葉に、私の顔は真っ赤に染まる、

驚きが隠せない私の青い瞳は、激しく揺れ動いていた。

もう、どうしていいのか解らないくらいに心臓は早鐘を打っていた。

涙が止めどなく溢れてくる。

だけど、これは多分歓喜の涙だった・・。

青だか赤だか自分でも分からない位に酷い顔になっていた。

だけど、潤んだ瞳で私を優しく見上げる
琥珀色の瞳は緊張気味に言葉を続けた。

「僕と結婚してください・・。
そして、どうか僕と一緒に、幸せになってください。」

そう言って、私の震える指をそっと手に取った。
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