時を繋ぐ真実の物語<「私の獣」番外編>
煌々と輝く天色の瞳は、いつになく猟奇的だった。


心臓を貫く、美しさ。


――――飢えた獣の瞳。


カイルのこんな顔は、久しぶりだ。







「カイル様……」


「すまない。痛かったか?」


アメリが不安げな声を漏らせば、カイルは我に返ったように表情を緩めた。そして、優しくアメリを抱きしめる。


「アメリ」


艶やかな黒髪をゆっくりと撫で、額にキスを落としながら、カイルが口を開く。


「俺は、愚かな男だ」


「何をおっしゃるのです。あなたほどの、立派な君主はこの世には存在いたしません」


フッと、頭上でカイルが微笑む気配がした。


「君主としては、立派かもしれない。だが、男としては哀れだ」


「なぜです?」


「お前に関わる、全てに嫉妬しているからだ」






たとえば、とカイルはアメリの腰に指を滑らせる。


「お前が着ているこの服が憎い。俺よりも多く、お前に触れているからだ。それからこのシーツも憎い。お前が、身を横たえているからだ」


アメリは、きつくカイルを抱き返した。


カイルの紡ぐ言葉の全てが、アメリの胸を締め付ける。この狂おしいほどに愛しい気持ちをうまく表現出来ないことが、アメリはもどかしい。

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