冷酷な王さまは愛し方を知らない
「先が思いやられますね」
「うぅ…」
呆れたようなキースさんの声。
私は肩を落としながら立ち上がった。
「用意は整いましたか?いきますよ」
「行くって…」
「王さまにご挨拶していただきます」
「お、王さまに…」
ど、どうしよう。
そんな、失礼があったら。
マナーも、常識も知らない。
「他の方ももう向かっています」
「えっ!すみません…」
部屋を出るキースさんを追う。
大丈夫だろうか。
本当に、私なんかがいいんだろうか。
なんで私が選ばれたんだろう。
目立つことなんてなにもしてない。
人より秀でているものも、自慢できるようなこともなにもない。
「こちらへ」
キースさんに連れられて訪れたのは大広間。
赤い絨毯が敷かれ、奥には豪華な椅子。
その前に明日の方へ向かい人が並んでいるのが見えた。
あの方達がほかの候補者ということだろうか。