冷酷な王さまは愛し方を知らない


「はむ…、むぐ……、んっ……ゲホッ、ゴホッ…」



頬が膨れるほど口に詰め込むものだから、苦しそうにせき込み始める。
私は慌てて水の入ったコップを差し出す。
コハクくんはそれを受け取るとごくごくと喉を鳴らしながら飲みこんだ。



「落ち着いて。ゆっくり食べたらいいから」

「…、…っ」



そう声をかけた瞬間、私はギョッとした。
コハクくんの瞳から、大粒の涙がポタポタと零れ落ちたのだ。



「コハクくん…?」

「……ダメ、こんな…、こんなの、俺……、戻れなくなっちゃう」

「え…?」

「こんなの知ったら、俺……、きっと辛くなる。……用無しだって、ここを追い出された後……、俺、きっと今までみたいにはいられな…俺…俺……」



どうして素直に受け取ってくれないんだろうと思った。
優しさをそのまま受け取ってくれればいいのにと。


でも、怖かったんだね。
きっと、とても怖かったんだ。



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