うぶ婚~一途な副社長からの溺愛がとまりません~
シートベルトを外して、お礼を言ったのだから、もう車から降りるべきなのになかなか降りられない。だってもう少しだけ副社長と一緒にいたいから。

手にしていたバッグを持つ手を強めると、彼がボソッと漏らした。

「今日一日が夢のように楽しかったから、やはり別れにくいな」

「――え?」

同じことを考えていた私は驚き彼をジッと見つめてしまう。

すると副社長は照れ臭そうに首の後ろに手を当てた。

「またこうしてふたりで休日に出掛けたり、食事に行ってくれるだろうか?」

――もう、どうして副社長は一々私をときめかすのだろうか。

「副社長、私たち交際しているのですよね? ……でしたら休日に出掛けるのも、食事に行くのも聞くまでもなく、当たり前のことだと思うのですが」

聞かれて嬉しくせに恥ずかしくて、素直に「はい」と言えない自分が恨めしい。
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