God bless you!~第9話「その付属と、なんちゃって」・・・合同スポーツ大会
……そうなってる、の?

右川が、男子に捕まっている。
恐怖で、体が震えていた。
「おまえら、何やってんだよ」
どけよ、と俺は付属男子を右川から引き剥がした。
「右川、大丈夫か」
泣いているのか?
その肩を支えて、顔を覗き込んだ。
ゆっくりと顔を上げた右川は……上目遣いを、さらに吊り上げ、怒りに滾る目で睨め付ける。……あれ?
「おーおー何だよ。カッコつけてんじゃねーよ!」
男子の1人が迫った。その我体の大きさに目を見張る。
俺と同じような背丈……と言っても、その体格は、陸上部のエースランナーを思わせる。そんな筋肉のラインが、くっきりだった。ガチでやったら、無傷では済まない。
だが万が一そうなったとして、右川に怪我させる訳にいかないんだから。
一応、女子だし。
俺は、右川を背中に庇った。一応、男子だし。
ガチはヤバい。ジリジリと後ろに、情けない事は百も承知で右川と一緒に引き下がる。足元が覚束ない。何度も絡まって、曖昧なステップを踏んだ。
「あッ!」
1人が声を上げたと思ったら。
「知ってる!このゲス!可愛い浅枝ちゃんとイケてる彼女の、2股男!」
「その上、カズミちゃんにまで手を出すか!」
「……カ、カズミちゃん?」
何だか、ややこしい事になっている。
ていうか、思ってたのと違う。それは分かった。
背中の右川を振り返ると、俺を見上げたまま、チッ!と舌打ちをつく。
軽く混乱した。
「カズミちゃん、任せろ。オレ達が、女子の仇を取ってやるよぉ」
男子は拳を握って、どんどん俺に迫る。
「待て!それを言うなら俺じゃなくて、そっちの重森だ」
その重森は、付属の後ろ、「そうなんだよなぁーーー」
ポケットに手を入れて、いつもの余裕の構えを見せた。
「こいつは生徒会でエラそうに幅を利かせてる。ちょっとモテるからってイキってやがるし。彼女がいる癖にサユリをナンパ。メグミもカナも喰っちまう。その〝小っちゃくて可愛いカズミちゃん〟も味見して」
味見と聞いて、過去の黒歴史が頭をよぎった。
いや、そんな余計なことを考えている場合じゃない。
……今って、どうなってる、の?
右川は、右を見て左を見て……難しい顔で上を見上げて。
この顔は、いつだったか見覚えがある。
生徒会作業と、追試の補習。サボるならどっちにするか。
どっちが余計に面倒くさいかと葛藤する、いつかの顔だ。

「詰んだ。もう知らねー……」

右川はそう言って、目を反らした。
ア然としてる場合じゃない。
だったらついでの仇も取ってやると、ますます付属の2人は俺に迫った。
「バカにすんなよ、45」
「いや、バカにしてんのそっちでしょ。俺は何もしてないっ!」
「オレらは、65なんですけどマジで」
「凄い!65は凄いよ!マジで!」
「悪ぃな。オレら頭だけじゃねーんだワ」
ボクシングはアマチュア3位入賞だと、男子は慣れた手つきで構えた。
気が遠くなる。
「右川、これって……どうするの?」
恐る恐る、顔を覗き込んだ。
右川は、襟首をグイッ!と乱暴に引っ張ると、
「戦えないくせして、のこのこ入って来んなっ!」

この、ヘタレ議長!!!
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