[完] 空に希望を乗せて [長編]

練習開始!

「じゃあ今日から2年生に1年生の教育をしてもらおうと思います。2年生が1年生の教育をするのは、弓場高校の伝統なんですよ」
うわぁ、私たちに1年生の教育をするなんてことができるのかな。不安の思いでいっぱいになる。
「じゃあ女子みんなで1年生教えてもらえる?」
「はーい!何したらいいですか?」
「んーまずは素振りやね。」
「はーい!」
「1年生みんな集まって〜」
はーい、とまばらに返事があってわらわらと寄ってくる。後輩って、可愛い。
「じゃあねー、香歩ちゃんと夕帆ちゃんは茉夏教えてー。それで結はあたしが教えるけ、あと千咲綺ちゃん!愛桜は優桜ちゃんと茜ちゃん教えてあげて。絢音は理恵ちゃんと菜々美ちゃん!茉莉は穂波ちゃんと真由美ちゃん。柚は日菜ちゃんと達平くん、桃夏は莉夏ちゃんと光瑠くん。友梨香が一希くんと小春ちゃん。これでどうだ!」
「美結流石です。」
「香歩ちゃん、夕帆ちゃんよろしくね」
できるだけ優しく微笑みかける。香歩ちゃんのくりっとした目と、私の目が合う。にこっと笑う香歩ちゃん。可愛い。天使だろ…。夕帆ちゃんの方に視線を飛ばすと、ちょっと睨んでるように見えたアーモンド型の目がふわっとゆるんで半月型の目になる。こっちもこっちで可愛い。
「じゃあみんな一通り教えよ〜」

まずは握り方。足にラケットを挟んで握手する手で持つ。一番最初に先輩から教わった方法。1年生って不思議とぎこちない感じになっている。つぎはクリア。ポイントは左手と180度、体を開くこと。
「じゃあ夕帆ちゃんからやってみよっか。真似してみてね」
戸惑いつつも夕帆ちゃんが私の真似をする。
「おー!いい感じ。でもねー…」
手取り足取り丁寧に教えていく。それは香歩ちゃんにも同じ。二人ともセンスいい…。
「じゃあ休憩していいよ〜」
一通り教え終えてふぅ、と息をつく。
「だからね、こうするの!」
「え?どーゆーこと?わかんない!」
なんだか甲高い声のケンカが聞こえてくる。川崎姉妹のケンカ。どうりで声が高いはずだ。
「どうした?」
「クリアがね、優桜が出来んのよ。」
「まじかー大丈夫?」
「大丈夫大丈夫!しごいとく」
にこっと笑って言うものだから優桜ちゃんの顔が強ばる。面白い。1年生みんなと仲良くなれたらいいな。
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