[完] 空に希望を乗せて [長編]
しかし、私たちには個人戦という救いがあった。こっちで勝てばいいじゃん。そんな救い。絶対地区大会まで行ってやろうじゃん!私の対戦相手は石橋高校の政田さんって人。団体には出てなかった。いっちょ勝ってやろーじゃん!コールされた瞬間、私は意気込んだ。
「よろしくお願いします。」
そう握手。1本にも力が入る。ラケットを持つ手がちょっぴり震える。ふー、と深呼吸して落ち着かせてキッと前を見る。相手が少しだけ怯んだのがわかった。ちがう!私はそんなためにしてるんじゃない!集中するためだろ?
相手のサーブ。ロングハイサービス。的確なドロップで返すもヘアピンで返される。なんとかはね上げると今度はスマッシュを打ってくる。返せない…。
ワンラブ。
大事な最初の一点を失ってしまった。
「茉夏!集中して!」
先生…
「茉夏?勝ってよ!」
「ふぁいとー」
「がんば!!」
うぅ頑張らなきゃー!!
再び相手のサービス。ロングハイサービスにいきなりスマッシュで返す。
こっちに1点。

それから一点取っては一点取られ、のようなゲームになって、ナインシックス。今は勝ってる。しかしこれが3ゲームにでもなると辛い。私のサーブ。ちょっぴり得意なショートサービス。相手は追いつけず失点。やっと負のループから抜けた!と思ったらこっちの失点。なかなかの勝負じゃないだろうか。最後の大会らしい。どうせなら勝ちたい!

それからシックスティーンセブンティーンとまで漕ぎ着けた。今は負けてしまっている。苦しい。相手のサーブからクロスドロップ。よし、上手く入った。セブンティーンオール。おっけ、あと5点!
こっちのサーブ。スマッシュが速くて返せない。なんという焦燥感。焦って焦って鼓動が速まる。負けちゃったらどうしよう…。
おわっちゃうの…?その気持ちは失点する度その気持ちが強くなっていく。引退したくない、その気持ちがギューッと強まっていく。
トゥエンティオール。デュースか…。しかも3セット目まである…。まだ1セット目。苦しい。ここからは体力勝負だ。そして、精神的に強い方が、デュースに勝つ。

結果は…25ー23
19ー21
23ー25
で敗退。悔しくて堪らないけど、後悔の念は残らない。思ったよりはスカッとした。ぶっ倒れそうなくらいまで、力をだしきった。正直、最後の握手に行くのさえ辛かった。涙は不思議と出なかった。それもなんか悲しいけど。

「お疲れ様ー!」
美結が抱きついてくる。
「ふわぁ、ありがとう!」
ただ1つ思ったのは、応援に応えられなくて悪かったな、と言うこと。

最終結果。
地区大会進出したのは、美結、愛桜、絢音&愛莉ペアの4人。ただ、自分の仲間が地区大会に進出できた、という事が嬉しかった。
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