【医、命、遺、維、居】場所
ランドセルから現在の小学生事情に話が飛んだ頃、柚希の携帯が鳴った。







「はい、傅雖。分かりました、すぐ行きます。」


「急患?」


「うん。行ってくる。」



「行ってらっしゃい。」







夜勤でも当直でもないけれど、求められたら応えずにはいられないのが柚希。


遥から紹介されたのは、大学に入って少し経った頃だったか。






同じ児童養護施設で育った家族らしく、兄妹みたいなもんだとお互い言っていたが、他人の俺から見れば恋人そのもので、何故かイラついたのを覚えている。




多分一目惚れしたんだ。


大学は違えど同い年にも関わらず、たくさんのボランティアに参加し、研修医になる頃には世界にだって目を向けて、生き生きとしている柚希の話を聞いているだけで楽しかった。



なんとなく進んだ医者の道だったけど、柚希に出会えたから良かったなんて。





俺は柚希のことを、ちゃんと知らなかったんだ。



知ろうとさえしなかったことを、6年前に思い知ったんだ。
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