虫~殺人犯の告白~
結局私は刑事の期待した答えとは大幅にズレた言葉ばかりを発した。

「自分が、虫だと思ったんです」

「殺して彼も、虫だと思ったんです」

忌まわしい生き物を見ていた事に急に気付いた様に刑事ははっとして、直ぐ部屋を出て行った。

暫くして数人の警官達に囲まれる形で、私は留置場へと促された。

取り調べは予定より早めに終了した。

明日は急遽、精神鑑定を行うらしい。

あの時彼が車の窓から外を見ていた様に、私はぼんやりとしたまま外に目をやった。

私が逮捕された事を誰も知らないだろう。

誰も私に興味はない。

私も彼らに興味はない。

鉄格子の外に灰色のコンクリートと、止まない雨がびしゃびしゃと音をたてているのが見えた。



< 6 / 6 >

ひとこと感想を投票しよう!

あなたはこの作品を・・・

と評価しました。
すべての感想数:0

この作品の感想を3つまで選択できます。

この作家の他の作品

風の見える所
月と星/著

総文字数/19,684

恋愛(その他)36ページ

表紙を見る

この作品を見ている人にオススメ

読み込み中…

この作品をシェア

pagetop