君のいた時を愛して~ I Love You ~
 コータが病室から出て行ってしまうと、部屋は色をなくしたようになった。
「あれ、ご主人は?」
 もう一度戻ってきた先生をあたしはまっすぐに見つめた。
「先生、あたし、死ぬんですか?」
 あたしの言葉は鋭く、先生はぎょっとした表情を浮かべた。
「えっ? どうしてそんなことを?」
 慌てたように先生はあたしに走り寄ってきた。
「検査をして、治療法を決めるために検査が必要なんだ。今は、いろいろと治療法があります」
 先生の言葉に、私はじっと先生のことを見上げた。
「病名は、なんですか?」
 あたしの問いに、先生は『白血病の疑いがあります』と静かな声で言った。
「はっ・・・・けつ・・・・びょう・・・・・・」
 あたしの目の前が大きくゆがんでいく。
「鼻血が出るのも、貧血を起こすのも、すごく疲れるのも、体がだるくて起き上がるのもつらくなるのも、重いものをずっと持てないのも、頭が痛くなるのも・・・・・・。そのせいなんですか?」
 マシンガンのように問いかける私に、先生は何かを言っているようだったけれど、あたしの目の前がどんどん暗くなっていく。問いかけるのに使った酸素が体の中から抜け出て行って、もう酸素が体の中に入ってきてないかのように、どんどん目の前が暗くなっていく。

(・・・・・・・・ああ、いつもの貧血だ・・・・・・・・)

 あたしは真っ暗になっていく世界に手を伸ばし、必死にコータを探した。

☆☆☆

 俺が病室に戻ると、中嶋先生と看護師が何人かサチのそばに詰めていた。
「何かあったんですか?」
 俺が問いかけると、先生は俺を安心させるように言った。
「突然、病気のことを聞かれて、死ぬのかと質問されたので、そんなことはないと答えたのですが、少し過呼吸症状を起こして、貧血を起こしてしまったようです。大丈夫です。サチさんは、すぐに意識を取り戻します」
 中嶋先生の言葉を信じて、俺はサチの手をしっかり握ってサチが目覚めるのを待った。
 先生は、午後の検査のための手配ですぐに部屋から出て行った。

(・・・・・・・・サチ、頼むから、俺のそばからいなくならないでくれ・・・・・・・・)

 俺はサチの手をぎゅっと握り続けた。
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