君のいた時を愛して~ I Love You ~
三十二
 翌日、半ば無理やりに退院したサチは、痛みに顔を歪めながらベッドに体を横たえた。
「やっぱり、今日退院ってのは、厳しかったんじゃないのか?」
 俺の言葉に、サチは大きく頭を振ってから、痛みで体を硬直させた。
 検査の前にどのようなことを実際に行うのか、中嶋先生から細かく教えてもらったけれど、医学とか病院というものに縁遠い俺には、ただものすごく痛いんだろうなということしかわからなかった。
「俺、今日は下に寝ようか?」
 体を少し動かすだけで痛みを感じるサチに俺が言うと、サチは口をへの字にした。
「コータが一緒じゃないと嫌なの!」
 サチの言葉に、俺は笑顔を見せた。
「わかった。今日は、俺が夕飯を作るから、あんまり期待しないで待っててくれよ」
 サチに言うと、俺は冷蔵庫の中の野菜をかき集めた。

 余り物の野菜を炒めて、塩コショウで簡単な野菜炒めを作り、サチが買いおいてくれた豆腐を冷ややっこにした。そして、インスタントの味噌汁を取り出してから、ご飯を炊くのを忘れたのに気が付いて、慌ててご飯を炊いた。

「コータったら、どうしたの?」
 俺の手違いというか、手順の悪さにサチは笑みを漏らした。
「なんか、サチのことが心配で、どうしていいかわからなくて・・・・・・」
 俺が正直に言うと、サチはゆっくりと体を起こしてベッドに座った。
 体の軸である脊椎に針を刺したのだから、そうそう痛みが簡単に引くはずもなく、サチは床に座って食事をするのも辛そうで、サチはベッドに背中を預けるようにして痛みを和らげながら、俺の作った夕飯を口にした。
「美味しい」
 サチは言うと笑顔で言った。
「そんなことないだろ」
 俺が言うと、サチは頭を横に振った。
「病院の食事、餌みたいだったもん」
 サチは言ってから、自分の言葉が俺の作った食事は餌よりましという意味に聞こえることに気付いたようで、慌てて両手を振って否定した。
 そんな、なんてことのない普通の会話に、俺とサチは笑顔で夕食を済ませた。

 俺は片づけをして、サチが痛くないように、そっとベッドに入った。 
 サチは痛そうに顔を歪めながら、俺の体に手を回した。俺もサチの体を優しく抱き寄せた。
「あったかい」
「あったかいな、サチは・・・・・・」
 俺はサチの体をいつくしむように抱きしめた。
「サチ、明日は、俺仕事に行かないといけないんだ」
 俺の言葉にサチは頷いた。
「わかってる。あたしのせいで、お仕事休んじゃったし、あたしは、明日は部屋でおとなしくしてるね」
 サチは俺の言葉に答えると、目を閉じた。
 俺はサチのぬくもりを感じながら、ゆっくりと目を閉じた。

☆☆☆

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