お嬢様、今夜も溺愛いたします。
──────────


「はぁ……」


あの後、


「では、私がご案内を………」


意地でもついてこようとする黒木さんを断って、食堂を出てすぐの所にあるトイレに駆け込んだ私。


「顔、あっか……」


鏡を見れば、熟れたトマトのように真っ赤な顔。

両手を当てれば、燃えるほど熱い。



「こんなんじゃ、紗姫たちの所に戻れない……」



心臓はずっとバクバクしてるし、耳には黒木さんに名前を呼ばれた声が残っている。



“ 美都 ”



あ〜っもう!!

こんなんじゃ、意識してますって、言ってるようなものじゃん!!


黒木さん、絶対そういうの嫌がりそうだし……


「美都ちゃんがいるからよ」


なんて界さんは言ってたけど、そんなの言われたら、ますます意識してしまう。


黒木さんが外ではあんなにクールなのに、私の前じゃ別人のように、表情を崩して笑うことも。

時に意地悪だけど、本当はとびきり優しいことも。


どんな女の人に告白されても、すべて断ることも。


「あーっ、もう……」



ほんと、どうしよう……


これからどんな目で黒木さんを見たらいいの……



「耳まで赤いし……」



ますます赤くなる鏡の中の自分を見て、私はまたため息をついた。


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