お嬢様、今夜も溺愛いたします。

「え……?」


驚き固まる私の顔を覗き込んだその人は、今にも泣きそうな顔で微笑んだ後、ぎゅうぎゅうと強く抱きしめてきた。


「間に合って良かった……っ
無事でっ……本当に……本当に、良かったっ…」


「…………」



えーっと?

これ、どういう状況……??



抱きしめられたまま、目が点になる私。


どうやら、この人が自殺を止めてくれたらしいけど……



く、苦しいっ!!


ぎゅうぅぅっと抱きしめてくるその人に、苦しいとバシバシ腕を叩いて訴える。



「な、なんなんですか、あなたはっ!?
いきなり他人を抱きしめるなんてっ、不審者か何かで訴えますよ!?」


いくら止めてくれたとはいえ、急に抱きしめてくるなんてっ!!


キッと鋭い視線を送ると、彼は一瞬悲しそうに眉を寄せたけれど、すぐに頭を下げて謝った。



「取り乱してしまい、申し訳ございませんでした。息がとまるかと思ったほど、周りが見えていなかったもので」


< 11 / 353 >

この作品をシェア

pagetop