お嬢様、今夜も溺愛いたします。
「え……?」
驚き固まる私の顔を覗き込んだその人は、今にも泣きそうな顔で微笑んだ後、ぎゅうぎゅうと強く抱きしめてきた。
「間に合って良かった……っ
無事でっ……本当に……本当に、良かったっ…」
「…………」
えーっと?
これ、どういう状況……??
抱きしめられたまま、目が点になる私。
どうやら、この人が自殺を止めてくれたらしいけど……
く、苦しいっ!!
ぎゅうぅぅっと抱きしめてくるその人に、苦しいとバシバシ腕を叩いて訴える。
「な、なんなんですか、あなたはっ!?
いきなり他人を抱きしめるなんてっ、不審者か何かで訴えますよ!?」
いくら止めてくれたとはいえ、急に抱きしめてくるなんてっ!!
キッと鋭い視線を送ると、彼は一瞬悲しそうに眉を寄せたけれど、すぐに頭を下げて謝った。
「取り乱してしまい、申し訳ございませんでした。息がとまるかと思ったほど、周りが見えていなかったもので」