お嬢様、今夜も溺愛いたします。


「なんだよこの格好はっ!?」


それから数十分後。

お店の奥から出てきた紗姫は怒りでぶるぶる震えていた。


「さっ、紗姫!?
めちゃくちゃかわいいっ!」


「美都……気持ちはありがたいけど、ぜんっぜん嬉しくねえ!」


「八神様。
女性の格好をされておられるのですから、言葉遣いも気をつけて下さい」


「それはむり。
ただでさえこんな格好なのに、頭ハゲそうだわ」


紗姫が嫌がるのもむりはない。


だって紗姫は、私と同じく星詠学園の女子の制服を着ていたから。


「いくら女性の方とはいえ、学校でのお姿だと、お嬢様の隣に男がいると思えてなりませんので」


「そんなのただのお前の自己満じゃん!」


「嫌ならいいんですよ、嫌なら」


にこりと笑う十夜さんに、うぐっ!と言葉に詰まる紗姫。


つ、強い……


十夜さんの有無を言わさぬこの顔はさすがの私でも反論できない。

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