お嬢様、今夜も溺愛いたします。
「これさ、この間修学旅行で行って買ってきたお土産なんだ。俺とペアのストラップ。良かったらつけてよ」
「………」
差し出してきたそれに一瞥したものの、組み合わせたら1つのハートになる代物に、鳥肌が立つ。
「ねぇ、美都ってば……」
「いいかげんにして」
口から出たその声は自分でも驚くほど低く、まるで静かな水面にぽたっと何かが落ちたような。
「気づいてないの?それともバカなの?私はね、あんたみたいな男と付き合うつもりはないし、顔を見るのだって、視界に入れるのだって嫌なの」
「なのに、なに?毎日毎日お店に来て、お客さんにもましてや従業員にまで迷惑かけてるって気づかないの?頭湧いてるの?」
「………」
とまらなかった。
ただでさえもう会いたくないと思っていた人に再会して、告白されて。
あのつらい頃のことが何度も頭をフラッシュバックして、私はとっくに振り切れていた。
「来ないで。もう二度とその顔を私の前に見せないで。大嫌い。この世で一番大嫌い」
声を荒らげて言った私に、最初は口を開こうとしたけれどすぐに閉じた。
今のこの時間、お客さんが誰一人としていなかったことが唯一の救いだった。