お嬢様、今夜も溺愛いたします。
「とう、やさん……?」
グサッと嫌な音がした瞬間。座り込んだ十夜さんの足元にはみるみるうちに赤い水たまりができていく。
「うそ……っ
うそ、でしょ……?」
大粒の涙が溢れるのも気にせずに、荒い呼吸のまま固く目を閉じた十夜さんを見つめる。
「い、やっ……いやっ……
死なないで。お願い。死なないでよ十夜さん。私、あなたに何も伝えられてない。何も言えてないのに、このまま一生会えなく、なるなんて……っ」
泣いても泣いても十夜さんが目を開けることはなくて。
血だまりが広がっていくだけ。
「くろ、きっ……」
唖然として固まる紗姫のすぐそばで、男は目を見開いて笑いを堪えているのが分かる。
「ふはははっ!!
やった。やったぞ。
これで美都と2人で暮らせる。幸せな家庭を気づける。やった、やった────」
「一色」
「はいよ」
「やれ」
「了解」
ドサッ!!
気づいたら目の前に気絶した状態で男は倒れていて、パンパンと手をはたく一色さんの姿が。
「もういいぞ、十夜」
その声に私の腕の体がむくりと起き上がった。