お嬢様、今夜も溺愛いたします。
────────


「はぁ……」


歩道橋から、忙しなく走っていく電車をため息をついて見つめる。


情けない人生だったなぁ……


楽しかったのも、幸せだったのもほんの束の間で。

まさか、ここまで人生のどん底まで落とされるとは思ってもなかった。



神様って、意地悪だね。


ん?


死ぬ前に、なんでこんなに普通な感情でいられるのかって?


だってさ、もう笑うしかないじゃん。


両親も、大好きな人もいない。

頼れる人もいない。


友達……は、いないわけじゃないけど、親友と呼べるほど仲がいい子はいない。


この広い世界で、完全に一人ぼっち。


「ははっ……」


涙なんてきれいなものは出てこなくて、逆に笑いしか出てこない。


こういう所が、彼は可愛げないって言ったのかな。


「たすけて……っ」




なんて、泣いて縋れば、誰か1人くらいは私のこと、見放さないでくれるのかな?


でも生憎私に、そんな悲劇のヒロインのようなことはできない。



だって、キャラじゃないもん。

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