冷徹王子と成り代わり花嫁契約

「利用価値があるとして王族に匿われたか?可哀想に、生きて尚利用されているとは」


ヴァローナは押し黙ったまま、クリストフ王子に鋭い眼光だけを向けている。
しかし、ヴァローナは指先一つ動かすことなくその場で留まっている。


「僕程度が正面から戦うのは無理だね」


理由は明白だ。クリストフ王子の手によって
私の首筋にナイフをあてがわれていたから。


「妙な気を起こすなよ。生きて取り戻したいならな」

「ヴァローナ……」


どうかあなただけでも逃げて、とヴァローナに視線で訴える。

しかし、ヴァローナは静かに首を横に振って、手にしていたナイフを、エリオット王子のいる方の床に滑らせるようにして投げ捨てた。

クリストフ王子は私の首筋にナイフをあてがったまま、あとから応援に来たらしい、ヴァローナの背後にある扉のそばに控えていた兵士に向かって声を張り上げる。


< 110 / 152 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop