冷徹王子と成り代わり花嫁契約

「……ロゼッタとは何も無かったの?仮とはいえ、婚約者だったんでしょう」


ずっと気になっていた疑問を、何気なくぶつけてみただけのつもりだった。

それをどう解釈したのか、エリオット王子はするりと私の手を離して、腰に手を回した。


「君は俺の初恋だった。《血印の書》で失った記憶とは関係なく、ずっと覚えていた。君以外の女性に触れるつもりは今までもこれからもない」

「……どうだか!」


引き寄せるように優しく抱き締められた恥ずかしさを誤魔化すように彼の胸に顔を埋めて軽口を叩いてみせる。

それすらも愛しくて仕方ないと言うように、エリオット王子は私の短くなった髪の毛に、優しく梳くように指を通した。


「心配しなくても、君は世界一綺麗だ」


全ての事実が明らかになり、後ろめたさも何もなくなってから、彼は人目もはばからずにこうして触れてきたり愛を囁いてくることが増えた。


「心臓が痛いわ……」

「このくらいで照れていたら、ここから先はどうなるんだろうな」


なんて言いながらエリオット王子が少し離れて、おもむろに手袋を外したかと思えば、素肌の指先で私の唇をゆっくりと撫でた。


「……もう!いい加減にして!」


fin.
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