冷徹王子と成り代わり花嫁契約

「君のその洞察力と頭脳を借りたいんだ。どうにか、お願いできないだろうか」


含みのあるその言い方に、私はハッと息を潜めた。

話に聞くエリオットとは、聡明で勇敢な男だった。妹の婚約者がどういう人間なのか、何度か遠目に彼の様子を伺ったことがあるが、こんな小娘に何かを悟られるような言動を簡単にするような男ではなかった。


「……私を試したの?」

「さあ。そんなことのためにわざわざロゼッタが暗殺されたなんて嘘はつかないよ」


どこからどこまでが、私を罠に嵌めるための計画だったのか。余裕綽々に微笑む男の綺麗な顔立ちを睨み付けながら、私は大理石の床に落ちた自分の髪の毛を踏みしめた。

一度、彼の懐に入って探らなくてはと思い、私は彼の手の中にあるロケットペンダントを奪い取った。

――騙し、騙されてあげましょう。真実が明かされるまでは。

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