プロポーズは突然に。
III.

距離感








「いってらっしゃいませ、奥様」

「ありがとうございます、日下さん。いってきます」




この生活にはまだまだ慣れない。


ううん、きっと一生慣れることはない。


相変わらず送迎つきの贅沢な暮らしは正直苦痛。


だけど、目立つのが嫌いな私のために人目につかないところで降ろしてくれる配慮が追加され、少しは気が楽だ。


それでも降ろしてもらった場所だって人が全く通らないわけではない。


だから、誰かに見られる前に、と足早に車から離れようとした瞬間──



「あ…奥様、少し宜しいですか?」



日下さんに呼び止められ、その場で足を止めた。




「はい。何ですか?」

「実はですね、」

「…?」

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