プロポーズは突然に。

涙の理由





芽衣子が結衣ちゃんを実家まで迎えに行く時間に合わせて今日は解散になった。


帰りの車内、隣に座る律くんは満面の笑みで私を見据える。




「おねーさんって嘘つきだね」

「…何が」

「惚ける気?赤羽家の人間になるおねーさんのこと、何も知らないわけないでしょ?」




とてもそんな雰囲気じゃないのに笑みを絶やさない律くんは不気味にすら思える。


何処にいたのか分からないほど気配を消していたくせにしっかり私と芽衣子の会話を聞いていたらしい。




「顔色一つ変えずに嘘ついちゃうんだ?」

「…そうだよ。悪い?」

「ううん、悪女、嫌いじゃないよ」

「あっそ」

「これからも義弟兼ボディーガードとして宜しくね」




握手を求めるように目の前に差し出された律くんの手。




「…馬鹿みたい」




私はそれを避けるように窓から外の景色を眺め続けていた。


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