プロポーズは突然に。
綺麗なグレーが目を引くニット素材のテーラードジャケットに黒の細身のパンツを合わせ、インナーはシンプルな白のVネックTシャツ。
決してセレブ感を強調したファッションでもなく、かといって控えめでもなく…とにかく嫌味がなくて普通にオシャレだ、と思った。
ハンドルを持つ彼の手に付けられた腕時計だって、茶色い革ベルトのカジュアルなものだし…
いつもスーツの時に付けているのは、金属ベルトが印象的な高級ブランドの腕時計なのに。
仕事の時は全身ブランドに包まれた彼もオフの時はこんな感じなんだ、なんて、やけに安心している自分がいた。
つい助手席からチラチラと視線を送ってしまう私に気付いたのか、赤信号で止まった瞬間、彼はこちらに視線を向ける。
「なんだ?」
「あ、何か…いつも日下さんが運転してるから変な感じだなって」
「ふーん…」
抑揚なくそう返した彼は、信号が青になったのを確認するとまた車を発進させた。