プロポーズは突然に。




今度こそ浴衣に着替えてソッと襖を開けると、彼はもう仕事を終えたようで、さっきまで書類が散らばっていた机の上はすっかり片付いていた。


私の気配に気付いたのか、彼はゆっくりとこちらを振り向く。




「どうだった?」

「…うん、夜景も綺麗で最高だった」




少しだけ顔を逸らしながらそう返した私に、彼は本当に嬉しそうに、良かった、と続けた。


どうして私が喜ぶとそんなに嬉しそうなんだろう。


誰かに尽くしてもらうのは嫌いなのに。


どうして…私の心はこんなに震えてしまうんだろう。




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