プロポーズは突然に。

懐かしい温もり










「ちょっとっ!聞いてんの?」






真横から聞こえてきたその声にハッとした。


私は、未だにカゴの取手部分を掴んで動けないままだった。

嫌でも蘇ってくる、あのとき聞こえた高笑いと馬鹿にしたような薄ら笑い。


逃げたい、逃げたい、でも…体が言うことを聞かない。


そんな私を薄ら笑いを浮かべながら見下ろすユキという女。





「死んだんならすぐに報告してくれないと~。あれから一度も学校来なかったから面白くなかったんだよ?」





────やめて……





「今も相変わらず汚いことしてんの?」





────もうやめてよ……


昔は、こんなのどうってことなかったのに。


いつからこんなに弱い人間になってしまったんだろう。


何も聞きたくない。耳を塞いでしまいたい。


そんな風に逃げることばかり考えている今の私は……すごく脆い。






「本当、あんたって────────」






< 321 / 370 >

この作品をシェア

pagetop